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2007年5月 7日 (月)

貝毒

潮干狩りのシーズンに入り、今一度「貝毒」について考えた。「貝毒」には麻痺性貝毒・下痢性貝毒・神経性貝毒・記憶喪失性貝毒などがあり、前2つは日本で、後2つは海外で問題になっている。一般的に激しい下痢症状で2・3日で回復するが、以下の2例は注意が必要。
 麻痺性貝毒:ほとんどの二枚貝の中腸腺に存在する。毒性分はサキシトシンで、フグ毒のテトロドトキシン匹敵する。食後間もなく舌や口唇・顔面・手足と「しびれ」が広がる。対症療法でしか対応がなく、重症になると死に繋がってしまうので、この時点で医療機関を訪れ方が良いと思われる。
 ベネルピン:別名アサリ毒はアサリ・カキなどの中腸腺に存在し、1950年以降、中毒事故を起きていないために何故に貝が毒化するのか未だに判明していない。しかし過去に150名以上の死者を出している。特にその死者の大半は1942年の春と49年の浜名湖での食中毒でのことだ。同じ静岡県に住んでいる私たちは弁天の潮干狩りは定番になっているので、この毒は見過ごす分けにはいかない。症状が現れるまで丸一日以上を要し、倦怠感・悪寒・悪心・吐き気、特筆すべきは通常、蕁麻疹が出る場所に皮下に小さな出血斑が現れる。その後、歯茎などの粘膜出血し、口臭が強くなり、肝臓に影響を与えて肥大・黄疸、末は錯乱や昏睡状態になり1週間以内に死に至る。
 「貝毒」は貝自身が作り出す毒でなく、二枚貝が水中のプランクトンを漉し取り栄養源にしている関係上、渦鞭毛藻の有毒プランクトン(アレキサンドリウム)などを摂取した際に、その毒成分が主に中腸線に蓄積されていく。貝類は積極的に動き回る生物でないので水域の環境をまともに受けてしまう。彼らは冬場、海底の土の中で胞子の状態で潜んでいる。水温が11度あたりで発芽し、13~16度で増殖して水中に大量に発生し、時おり赤潮の原因になる。貝類の産地を有する各県の水産試験場では海域の監視をしている。
静岡県水産技術研究所・研究課題ページ 
   http://fish-exp.pref.shizuoka.jp/kadai/hamanako/211.pdf
 貝類は採るより拾うと言うように簡単に手に入れることができる食材で日本各地に点在している貝塚あるところから、石器時代から食べられていたことが分かる。特別な道具がなくても、木の実を拾うように簡単に摂取できる一番身近な蛋白源だったと思う。アサリは「漁る」・ハマグリは文字通り「浜の栗」・牡蠣は「掻き」・シジミは「ちぢむ」など現在に日常でも使う言葉に残っている。縄文人は「火」を使っていたので熱を加えると食中毒に掛かる確立がグンと低くなることを知っていたのではないかと思われるので、「貝毒」に対しても加熱により対処していたと思うが、毒によっては熱に強い毒素があるので、かなりの犠牲者が出たであろう。そして現代においては、貝の生食を寿司種で考えると中腸線が取り除かれていることから、時代を超えての経験から得とくしたものだろう。
 実際に貝を採取する場合は、地元の漁協が管理している潮干狩り地や海域で行う方が無難だろう。また、それ以外のでの採取は地元水産関係の情報を確認すると同時に赤潮が発生しやすい場所での貝の採取は十分注意すると言うより避けるべきだろう。

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